それでも歌う歌

へへへ。。

 小さい頃の夢は「アイドル歌手になる」ことでした。何故かと言うと、小さい頃、親戚の集まりがあるときなどに私は当時好きだったアラレちゃんやピンクレディーを自己流の振り付けで歌いおどって大人たちを喜ばせていました。そうするとおこづかいをくれます。
 「ななちゃんが(私)が大きくなるまでお母さんが貯金しとくからね」
という母におこづかいを預け、私は親戚の集まりがある度に営業活動に精を出していました。おこづかいも嬉しかったのですが、ブラコンの私に大好きなお兄ちゃんが
 「ななちゃんは将来歌手になれるね。そしたらお兄ちゃんがマネージャー
  になるよ」
と言いました。それからの私はベストテンを毎週かかさず見て明菜ちゃんや静香ちゃんなどの歌と振り付けを必死に練習しました。サインの練習にも励み、鏡の前では笑顔のつくりかた、カメラ目線の仕方だって練習しました。
 「なふん(私)はおだてると木じゃなくて空に昇るよね。しかもなかなか
  降りてこないよね」
とよくだんなさまに言われます。大人になった私はアイドル歌手にならずに
 「ななちゃん看護婦さんになったら?白衣が似合うはず。お給料もたくさ  んもらえるみたい。そしたらお兄ちゃんにおいしいマグロのお寿司食べ  させてね」
と、大好きなお兄ちゃんに言われた通り看護師になりました。でも歌は好きなので友達とよくカラオケに行ったりして、おおいに歌い、おおいに踊り、小さい頃の練習の成果を発揮していました。

 だんなさまと結婚する前、彼の誕生日の日にカラオケに行きました。だんなさまを喜ばせたい一心で振り付けをしながら歌いました。気持ちよく歌い終わった私に一言。
 「なふんって、すっごく音痴だね」

 は?音痴って誰が?アイドルになるはずだったのに?サインだって書けるのに?まったく、最近の歌を知らないからそうやって言ってるんじゃないの?もう1曲歌ってやるか。
 「音程がかなりはずれてるよね。あと、歌と踊りのテンポが違うよね」

 今までさんざん人前で惜しみもなく歌い踊ってきました。その時初めて自分が音痴だということを知りました。今までのことがとてもとても恥ずかしくなって、その日から私は人前で歌うこともカラオケに行くこともなくなりました。

 お母さんになってやりたかったことの一つに、童謡をうたってあげるというのがありました。心花に歌ってあげたいけど、音感が悪くなったらいけないし・・。でも、赤ちゃんだからわかんないか。
 「ねーんねーんころーりーよ・・」
 今にも眠りそうな心花に歌ったところびっくりして泣き出してしまいました。他の歌を歌っても、赤ちゃんのくせに眉間にしわをよせます。なんとか聞いてくれる歌は「ぞうさん」と「かえるのうた」です。その2曲しかないので、普通の音程だけじゃ飽きるなあと思ってラップ調で歌ってます。そんな一生懸命ラップ調で歌っている自分を時々不憫に思いながら、今日も心花に歌を歌ってあげます。5回に3回は泣かれながら・・・。

 ちなみに、小さい頃貯金されてるはずだった営業の成果は、私の知らない間に母に投資されてました。
 
 ちなみにちなみに、オレンジレンジの「花」を気持ちよさそうによく歌っているだんなさまも見事な音痴です。