ママがパパを好きな理由

みんな仲良し

いつもママがパパにいろんなダメ出しをしてるのを不憫そうに心花は見てるよね。でもね、昔、ママはパパに自分の気持ちを言えないくらい弱虫だったんだよ。「これを言ったら嫌われちゃうんじゃないか」って、自分を守ることばっかり考えてて、パパに合わせようとばかりしてたんだ。
でもね、自分の思いを言葉にしないと相手に伝わらないんだというあたりまえの事をママはパパに教えてもらいました。パパにとって耳の痛いような面倒くさいような事でもママは言えるようになりました。「嫌われちゃう」と自分の事を考える前に、パパの反応や表情、立場を考えながら言うように心がけてはいるんだよ。
ん?ママの頭にツノが生えてるって?
あらあら、このツノはパパへの信頼と思いやり。そして大きな愛情なんだよ。。多分。。。

これは心花が産まれて来る前のお話。。。。

その年の流行はロングマフラーでした。
パパに久しぶりに会えるその日は、ちょっとでもパパに「かわいい」って言ってもらいたくて、ママは前の晩からあれにしようか、これにしようかと鏡の前でファッションショーをしてたんだ。そして買ったばかりのロングマフラーをしてパパに会いに電車に乗りました。
あれと、これと、いっぱいお話しようとドキドキしてたの。
そしてパパの待つ駅が近づいてきました。11月だったからだいぶ風が冷たくなったきて、その中で待っていてくれてるパパに早く会いたいような、久しぶりに会うから恥ずかしいような気持ち。。電車がホームにすべりこんだとき、パパの笑顔が見えました。「やっと会えた・・・!?」ぱっと見だったから定かではないんだけど、パパがとても涼しい格好をしていたような。。でも11月だしね。電車の扉が開いて、深呼吸したママはパパを探しました。改札口に両手で手を振っているパパを発見。ママも顔がゆるんで改札口に向かったその時。

「ぬおっ!!」

正直、マンガみたいなセリフをママは言いました。このまま改札口を通らずに引き返そうかとも思いました。。。だって、向こうでスペシャル笑顔で手を振っているパパは、Tシャツに、マラソン選手もびっくりな短パンをはいてたんだもん。。。そのまま足元に目を向けると昔、家のおじいちゃんがはいていたのと同じマジック式の紺の靴。。。

うすうすは気付いていたの。もしかしてパパは洋服というものに全く関心がないんじゃないかって。ポロシャツもTシャツも必ずズボンに入れてるし、春夏秋冬、同じスリッパはいてるし。。。

消えそうな意識を必死で呼び覚まし、パパの所に行きました。11月。間違いなく寒かった。

ママ:「ひ、久しぶり。元気だった?(ひきつり笑い)ところで寒くは・・・?」
パパ:「うん、元気だったよ!(スペシャル笑顔)今ね、お風呂入ってきて、まだ暑いんだよね」
ママ:「そ、そうなんだ」
パパ:「おなかすいたでしょう?おいしそうなピザの店があったよ。そこに行ってみる?」
ママ:「あっ、えっと、今日はお家でお弁当が食べたい気分かな・・・」
パパ:「せっかく来てくれたのにお弁当なんて。行こう!たくさんお酒飲んでもいいからね」

1軒のかわいいイタリアンのお店。そこに連れて行ってくれました。けっこうお客さんもいました。いろいろ注文して、そして頼んだ赤ワインがきました。パパはママにワインをついでくれて、乾杯。パパはワインの匂いをかいで口の中に含み、うーんと考えてママにこう言いました。ママの忘れられない一言。

パパ:「このワイン、まだ若いね」

「若いのはワインだけでなく、寒い中、短パンを着こなしているパパだ!!!」とママはパパにつっこみたくてしょうがなかったけど、ママはパパに嫌われるのが怖くて何も言えない人だったから、その日は泥酔する道を選んで、あまり飲めないワインをママは2本飲みました。

つらかった二日酔い。これから先、デートの度に酔っ払うわけにもいかない。はて、どうしたものか。内面を磨くのは当たり前。外見だって少しでも磨かなきゃ。でもパパに「それ、やばい」とは言えない。。でも今行動しなきゃ、一生変わらない。しかも自分も一生見ないフリをしないといけない。何よりも、どんなにパパがいいこと言ったって、あまりに外見が適当だと、ちょっと信用にかける部分も少なからずあるような気がするし。。。

そしてママはパパに言わなくちゃいけないことは言うようにしたの。幸いなことにパパはママの言うことを「えー」って面倒くさそうにしながらもきいてくれます。「嫌われたら・・・」っていう弱虫ちゃんはパパがママを思ってくれる言葉や行動に気付いたから、どっかに飛んでいっちゃった。だからってママは言うだけではいけないと思うんだ。ママも苦手なことを、でも必要なことを努力するようにしてるんだよ。すぐに結果が出ないような小さなことでも、誰かに「すごいね」って言われなくても、ママはパパのため、心花のためにコツコツ頑張るんだ。環境が人を変えるんじゃなくて自分の行動が環境を変えていくことを覚えててね、心花。

パパはママが見てないと平気で何日も同じ洋服着るし、ありえないくらい髪もはねさせます。こないだパパが寝ている間に、こっそり顔半分のおひげを残し、あと半分を剃るっていういたずらしたけど、パパ、それでお仕事普通に行ったし、パパはママにとって最高におもしろいんだ。こんなパパ、あまりいないよ。心花のパパは心花やまめやママにとって自慢の最高なパパなんだよ。今晩もパパは当直頑張ってるね。パパと眠れる日が月に半分くらいだから寂しいかもしれないけど、心花のこと、パパとっても大好きだからね。パパが帰ってきたら今日何して遊んだか、たくさんお話しようね。

ね、ママのツノはパパへの思いで大きいでしょ。

あ、そうそう、改札口を通ってパパに会ったママに言ったパパの一言。

「そのマフラー、洗濯失敗?」